今商品撮影を始めるなら照明機材は・・LED?それともストロボ?
商品撮影においてプロが選ぶ照明機材というと長らくストロボ・フラッシュでしたが、最近はLEDライトの進化がめざましく「LEDライトだけでもいけるのでは?」と思うことも増えてきました
そう思うようになったのは単板式LEDライトを購入したからでした
今までのLEDだと発光部分が沢山並んだ商品が多かったのですが、単板式は上写真のように発光部分が1つのものです(黄色い部分)
正確には小さいつぶつぶが並んでいるのですが、使ってみると1つのライトとして使えます
発光部分が沢山並んでいると被写体に当てた時に影が沢山でてしまったり・・表現の幅が狭くなりイマイチ上手く使いこなせられずモヤモヤしていましたが、単板式LEDライトはストロボと同じように使えるようになりました
「ストロボは一瞬の光だからライティングが難しい」とういのはよく言われていることですがLEDならずっと点灯している定常光なのでストロボよりわかりやすい
しかもストロボと同じような光質・表現なら「今からやるなら断然LEDじゃね?」という流れがあるような無いような・・・
というわけで「ストロボとLED どっちがいいのか?」を改めて考えてみました
ストロボの利点と考え方
まずはストロボについておさらいしていきましょう!
私が思うストロボを使うメリットは
- 部屋の明かりに影響されにくい
- ブレにくい
- 小型かつ大光量
- バッテリー運用がしやすい
- 発熱が少ない
以前「プロカメラマンが教える撮影機材」でもストロボについて書いていますのでそちらも合わせてどうぞ
部屋の明かりに影響されにくい
定常光(LEDなど)のライトを使って撮影する場合、真っ暗な部屋で撮影用のライトのみで撮影をします
複数の照明を使うと色が混ざってしまったり思ったような光にコントロールしづらいので「撮影用のライトのみ」で撮影する必要があるからです
ストロボは大きな光を一瞬光らせて撮影するのですが、ストロボの光を基準にライティングすると部屋の明かりが暗すぎるので影響をほとんど受けないということです
ちょっとわかりにくいと思うので補足しますと・・・昼間に外でポートレート写真を撮るとします
モデルの横に火を灯したロウソク置いたとしても、太陽とロウソクでは明るさの差が大きすぎるのでロウソクの光は写真にほとんど影響しませんよね?
明るさの差が大きくなると影響を受けづらくなる
ストロボと部屋の蛍光灯の明かりではそのくらいの差を作ることができる、ということです
ブレにくい
シャッターが開いている間に動いてしまうと「ブレた写真」になってしまいます
ストロボで撮影するとシャッターが開いている間でも、ストロボが光った瞬間のみ動いていなければブレないのです
ストロボが光っている時間はとても短いので結果的にブレにくいというわけですね
定常光(LEDなど)だと三脚を使って固定しないといけない場面でも、ストロボなら手持ちでバシバシ撮影することも難しくありません
つまり素早い撮影ができる!ってことですね
小型かつ大光量・バッテリー運用
ストロボはLEDと比べると大光量です、そのうえ最近は小型のストロボが増えていますね
しかも、バッテリー運用も可能!
上記写真はGodoxのAD300Proというストロボですが300Wでバッテリー運用可、1つのバッテリーで320回発光できる
価格も安く64,680円です
予備バッテリーを1つ持っていればたくさん使っても撮影している間に予備を充電していけばバッテリー運用をし続けられます
私はこのストロボを購入してからバッテリー運用にハマりました、もう電源ケーブルを使う撮影には戻れません・・・本当に楽です
発熱が少ない
ストロボは発熱が少ないです、といっても無いわけではないのですがLEDライトと比べるとかなり少ないですね
スヌートの段々になっている部分は光に影響があるのか~ということで撮影してみました、使ったのはどちらも3Dプリンタ作
— 写真撮る人 鈴木遥介 (@capriciousinfo) June 3, 2022
左:スタック式の段になっているスヌート
右:一体型の円錐スヌート
長さが少し違う(先端の穴は同じサイズ)ので光の大きさが違うけど特に変わりなし pic.twitter.com/ZigGFbgYIF
最近3Dプリンタを買いまして、色々と作るなかでライトに付けるモディファイア的なものも作っています
スヌートやリフレクターのようなものですが3Dプリンタ(FDM方式)は熱で素材を溶かして形を作っていきます、というわけで熱にそんなに強くないんですね
溶けることはないのですが柔らかくなって歪んでしまうこともあるので、できるだけ発熱が少ないほうがいいというわけです
実際LEDライトで使ったところ歪んでしまったので、ストロボは発熱が少なくてよかったな~と思っていますw
瞬間光なので「光が見えない」
ストロボは一瞬の光なのでどういう風にライトの光が当たっているかがわからないのでライティングをしづらい、と思っている方は多いと思います
それをサポートするために「モデリングライト」という定常光(最近はLED)がついているのですが、あれは基本的には目安であることが多いです
光量が少ないので環境によってはかなり見ずらく、モデリングライトの調光は面倒なことが多くライトごとにどのくらい差があるのかを把握することが難しいです
「やっぱりストロボってわかりづらいじゃん?」と思うかもしれませんが・・・
慣れてくるとモデリングライトさえなくてもどういう光が当たっているかわかるので、正直問題ないです
どういう光質で、どういう角度で、複数ライトを使うなら光量差はどれくらいで・・・ということさえ頭にあればライティングはできてしまうのです!
今メインで使っているストロボ
写真のカメラマンが解説するLEDライト
いつもストロボを使っているスチールカメラマンである私がここ数年で購入してきたLEDライトと単板式LEDライトの現状について知りうる限りで書いていきます
お勧めは単板式
お勧めのLEDライトは冒頭でもお伝えした通り、単板式のLEDライトです
ちなみに「単板式」は最近の商品名にはついていないのですが数年前は商品名に単板式と記載があったので今でも私はそう呼んでいます
基本的には「発光部分が複数ではなく1つのもの」と考えていただければ問題ありません
光量に応じて上がる価格
最近は大きな光量の商品も増えてきましたが光量が大きくなればなるほど価格も上がっていきます
特に600wを超えたあたりから極端に価格が変わります
- 低光量 60w程度 3万強
- 中光量 100~300w程度 5万くらい
- 高光量 600w程度 20万超え
- もっと高光量 1200w 40万超え
こんな感じ
300wくらいまでが購入しやすい価格なのでまず買うならここらへん、物足りないと感じたら600w以上を考えると良いと思います
発熱
当然光量に応じて発熱も大きくなります
昔のハロゲンランプと比べれば発熱量は少ないのですが200wあたりのものを使うと意外に熱くなります
非接触型の料理用温度計にしました!
— 写真撮る人 鈴木遥介 (@capriciousinfo) June 7, 2021
冷却ファン部分を計ってみるとアプリの温度計と同じくらい
dretec 赤外線 料理用 非接触温度計https://t.co/E9MrLx99sF pic.twitter.com/7Vw9lqOmFj
60度くらい、トレペが焦げるほどではないですが1200wはどうかな?w
色を変えることができる
ストロボは単色のみですがLEDライトは色を変えることができます
種類としては
- 色温度を変えることができるバイカラー
- フルカラーで使うことができるRGB
RGBの場合は大抵バイカラーもできるものが多いかと思います
バイカラーに関しては色温度を変えることができ、大抵2700K~6500Kの間で調整できます
私はフルカラーで使うことは無いのでRGBライトは持っていないのですがバイカラーは所有しています
バイカラーは色々なライトと混在して使うときに便利ですが、撮影用のライトのみで撮影する場合には必要ない機能ですね
例えば白色電球のような赤いライトが地明りとして使われているような場所で撮影をする時に、単色のLEDライトを使うと色が混ざってしまい変な写真になってしまうことがあります、そういう時にバイカラーを使うと同じような色合いで撮影をすることができます
これについては使う人によっては便利な機能といえますね
マウント
今まで紹介してきたような単板式のLEDライトはストロボと同じく色々なモディファイアを付けることができます、具体的にはスヌートやソフトボックスなどなどです
というわけでモディファイアを取り付けるためのマウントが存在します
ストロボですとメーカー各社がそれぞれマウントを作っていましたが、LEDライトの場合はほとんどのメーカーが「ボーエンズマウント」を採用しています
Godoxのストロボはボーエンズマウントを採用しているのでボーエンズマウントで揃えておけばストロボもLEDも使えるというなんとも便利な状況になっています
サードパーティ製も沢山出ているのでコスパもとっても良いw
メーカー
単板式LEDを出しているメーカーがいくつかあるのですが、個人的に信頼しているのは以下です
- Aputure
- amaran
- Godox
- NANLITE
amaranはAputureと同じメーカーが廉価版として販売していてお安いです、といってもGodoxとNANLITEと同じような価格です
というのもAputureがめちゃくちゃ高いんですよね、「プロが使うなら」みたいなメーカーではあるのですが個人的には高すぎると感じています
ストロボで例えるならProfotoやbroncolorみたいな感じですw
私はコスパとスペックのバランスが良い機材が好きなのでAputureは所有していませんがこのジャンルの商品を紹介するときには必ず出てくるメーカーです
価格差は「amaran < Godox < NANLITE <<Aputure」って感じです
持っているLEDライト
ストロボとLED どちらが優れているのか?
というわけで、ストロボとLEDライトについて色々と知ってもらいました
ここからが本題です(長かったね)、比べていきますよ!さぁ、どっちが良いんだろう?
光質・光の広がり方
冒頭でも話をした通り光質はほとんど同じですが、若干LEDライトのほうが使いやすいと感じました
というのもストロボは発光部分が「C」みたいな形になっているので影が重なり滲んだような見た目になったりするのですがLEDはそういうことがありません
一番右がLEDライトです、影がクッキリとしていますね
夏の日差しのようなライティングで撮影をしたいというときにはLEDライトのほうがやりやすそうです
こちらは「波紋の撮影を一番綺麗に出せるライトは?」という話をした動画ですが、やはりLEDライトが一番結果がよかったです
光の広がり方もLEDのほうが素直に感じます、アンブレラを使ったときに全面にうまいこと光が当たっています
ストロボは突き出しているのとグローブがあるので光の当たり方にムラがありますね
紫外線の影響
ストロボは紫外線を出しているので蛍光塗料を使っている場合青くなってしまいます
いつもはSAVAGEの背景紙を使っているのですがたまたまSUPERIAの背景紙を購入した際に青くなってしまいました、両方同じスーパーホワイトの商品ですがSUPERIAはかなり青いですね
こちらはLEDライトで撮影したものです、青くありません
目で見た状態そのままで撮影されています
というのもLEDライトは紫外線を出していないので蛍光塗料の影響を受けないということですね
と、ここまで見ると「断然LEDライトじゃん!」と思いますよね?
ここからは違いますw
バッテリー運用
バッテリー運用は断然ストロボがやりやすいです、小さいしバッテリーを内蔵できる構造になっているからです
LEDは内蔵できない上にアダプターを別途装着する必要もあるしバッテリー自体がめちゃくちゃ大きいです
しかも、運用できる時間は短い・・・という全く良いところ無しです
定常光をバッテリー運用するとなるとバッテリーは沢山用意しないといけないし色々と取り付けるアダプターなどが増えるため機動力は低くなります
光量・調光
光量の推移を持っているストロボ・LEDを測っておいたので気になる方は見てみてください
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1fU9jAv-Ha4WUGPnKfaLTGYqIdcktr8ZRObp6sTrFUn8/edit?usp=sharing
光量は断然ストロボのほうが大きいです
LEDライトはリフレクターを付けないと結構暗くてソフトボックスで使うときは思った以上に光量が落ちる印象です
あと特徴的なのは「調光」ですね
ストロボは1/1・1/2・1/4・1/8~と1段間隔(間もあります)で調光していくのでカメラの設定と合わせて考えやすいのですがLEDはそういう調光にはなっていません
LEDの調光は1~100%の100段階になっています
一見「細かく調光できてよさそう」や「わかりやすそう」と思うかもしれませんが、これが案外使いづらかったです
100%の状態から1段暗くしようとすると1/2なので50%に調光します、そこからまた1段暗くすると1/4なので25%です
最初は1段が50段階なのですが・・どんどん減っていって光量を落としていくにつれて差が作りづらくなってしまうんですよね
100%から90%に下げても見た感じほとんど変わらないんですよね、見た目で調光するのって案外難しいなと感じました
・・・だったらストロボのほうが使いやすいよねと感じましたw
まとめ
まとめます
- LEDでもストロボと同じように撮影ができる
- むしろ光質的にはLEDのほうが有利なことも多い
- バイカラーは環境によっては便利
- 部屋の明かりをつかた状態でも影響がほぼないストロボ
- 光量はやはりストロボのほうが大きく使いやすい
- ストロボはバッテリー運用が実用的
- LEDの調光は微妙
- 紫外線を出さないLEDは蛍光塗料の影響を受けない
個人的には基本ストロボを使って撮影するのはまだまだ変わらないですね
「ブレずらい」「部屋の明かりを付けた状態でも影響が少ない」「絞りたいので光量は大きい方がやりやすい」「調光がやりやすい」「Godoxのコマンダーが便利」ここら辺が理由です
ただ、写真と動画両方撮影してほしいと言われたらLEDライトだけで良いかなと思いました
というわけで長々と「ストロボとLEDどちらがいいのか?」について書いてきましたが、こちらは動画の内容をブログに直したものですので動画版もございますので是非そちらも観てみてくださいねー!(途中に埋め込んであります)